この腕の中で君を想う


「だって…仕方ないじゃん。もうこれ以上冬夜の事考えたくないの!!」


冬夜がもっと嫌な奴だったら良かったのに


別れた後もいつも通りに接してくれた

優しくて、笑顔がキラキラしてて頼りになる冬夜

教室ではみんなに囲まれて笑っていた



嗚呼

辛いのは私だけなんだ…って思ったら余計に悲しくなって



「ねぇ…お願い」





一瞬でもいいから


忘れさせて



溢れ出しそうな涙を堪えてゆらゆら揺れる白山奏斗の視線を捕らえる


「……ッ」


哀しげな表情を見て息を詰めると、すぐに目を伏せた



カラン…とお茶と一緒に入れた氷が小さく音をたてる

物静かなリビングにその音は、はっきりと聞こえた

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