この腕の中で君を想う
カチャン…カチャ…
食器同士の触れる音と水の流れる音が、テレビに映るアナウンサーが今日のニュースを淡々と読み上げている声と共に耳に入ってくる
「ご馳走様でした♪やっぱり美里さんの料理は美味しいです!!毎日来たくなりますよ」
「ありがとう。そう言って貰えると私も腕のふるい甲斐があるわ♪」
時折会話を織り交ぜながら食べ終わった食器を美里さんと一緒に洗っていく
残された増田さんと奏斗さんは、なにやら向かい合って小声で話し合っていた
…何やってるんだろ
不思議に思いながらも、一度家に戻らないといけない事を思い出し、テキパキと食器をすすいでいった
「美里さん。私、そろそろ家に帰りますね」
洗い物が終わると私はテーブルの横に置いておいた鞄を肩に掛けて玄関へ向かいながら
キッチンを綺麗に拭いている美里さんに一度声をかける
二人は真剣に話し込んでいたから声を掛けるのをやめた
「はーい。お母さんによろしく伝えといてね」
リビングから顔だけ出してニッコリ笑うと、私もつられて笑みを浮かべる
軽く手を振って玄関から出ようとすると
「ちょっと待って!!」
慌てて小走りでやってきた増田さん
「なんですか?」