この腕の中で君を想う




一向に私を車から出そうとする気配のない奏斗さんの手をペチペチ叩く


「……はいはい」

そうすれば意外にあっさりと手は外され、私はサッと車から降りた


「…何か企んでる?」


「別に。なんかして欲しいのか?」


「違います。なら良いです」


ドアを閉めようとしたら何故か奏斗さんまで出てきて

見送りしてやるって言うからますます怪しい


ま…あんまり気にするだけ無駄か



「今日は…本当にありがとうございました」


「いいえ~♪今度はご飯でも一緒にどう?」


「…考えておきます」

「よっしゃ!!じゃあ連絡先交換しよ♪」

嬉しそうにガッツポーズをする増田さんに自然と笑みがこぼれる

きっと一緒に食べるご飯は楽しいだろうな…なんてちょっと想像してしまった


「おい」

奏斗さんの抗議の声が聞こえたが気にしない

さっきのセクハラに対してのささやかな反抗だから



「俺の愛をそーしん♪」

「いや、愛はいりません」

「無理。それ返品不可だからご飯行こうね」

「ふはっ…どんな理由ですかι」


必死にご飯に誘う増田さんが可笑しくて吹き出した

「分かりましたって………あ」

「ん?どうかした?」

「いえ……」


そういえば奏斗さんのアドレス知らないや


仮にも奏斗さんは私の彼氏だし…先に増田さんの連絡先聞いちゃったのは流石にマズかったかも


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