この腕の中で君を想う



「かな…と…さん?」

やっと掠れた声で目の前にいる奴に話し掛ける


嫌な予感がした

嫌…

まだ冬夜には知って欲しくない


私から言うんだ



「奏斗さん…駄目…」

私は首を横に振って拒否の意を示す


だけど奏斗さんはただ笑みを浮かべているだけ

それも笑っているのか分からない…冷たい笑みで


「俺達は――――」


「~~っ!!」

その先を聞きたくなくて声にならない叫びをあげると、耳を塞いでその場にうずくまった


もう…終わり

友達にも戻れなくなる…

仕方ないんだよね、自業自得なんだから


視界の見えない中、私は力の限り目を瞑って覚悟を決めた









「……で、第三者である俺がバーン!!と格好いい台詞を言うと、俺の彼女役である眞理ちゃんが泣き崩れる!!

奏斗は成す術もなく渋々眞理ちゃんから離れて、俺がその隙に救出してハッピーエンド!!」



「……え?」

スローモーションのような動作で顔を上げる


そこには

「だよね?眞理ちゃん」

「増田…さん?」


車の中にいた筈の笑顔の増田さんがいた




< 218 / 252 >

この作品をシェア

pagetop