この腕の中で君を想う
「ぜってぇ後で殴らな…」
そこまで口にしたが、自分に非があったのは紛れもない事実であり、何処にも吐き出すことの出来ない苛立ちにチッと舌打ちをした
幸いにも財布は内ポケットにいれてあったためタクシーを捕まえて早々に会社へ出勤することは出来るが、どうにもすぐに仕事できる状態ではなく、少し歩いて偶々目に入ったこじんまりとした店に足を運んだ
カラン――…‥
小さな出入口だったわりには中は意外と広く、どことなくバーのような雰囲気を漂わせているが周りをみれば変わった形のインテリアが沢山置いてあり、異世界に迷いこんだような錯覚にさせられる
見上げれば高い天井にも変わった形の照明がぶら下がっていた
「はーい、いらっしゃいま…」
あら?と、グラスを拭いている手を止めて物珍しそうな顔を浮かべる一人の女性
「見ない顔ね。お一人様?」
不思議そうな顔はすぐに柔らかい笑みへと変わり、首を傾げて人数を聞く女性は誰かに似ているような気がした
「あぁ」
「そ。じゃあそこにどうぞー」
そう言って女性の目の前のカウンターに促され、俺は店の奥へ足を踏み入れた