この腕の中で君を想う
しばらく他愛もない会話を交わして、気がつけば出勤時刻の一時間前となっていた
「もうこんな時間…そろそろ会社に行かないと」
ここから会社まで少し距離があるため、俺は鞄(捨てようにも捨てられなかった増田の悪戯鞄)を持って席を立つ
「コーヒーご馳走さまです。茅野さんと話してたら大分楽になりました」
「そ?それは良かった。また暇なときにいつでも来てね♪ここは年中無休だから」
私も暇だからねって笑った
…やっぱり誰かに似てる
「はい。また」
「あ、ちょっとまって」
ちょいちょいと手招きされ、俺はカウンターへ近づく
茅野さんは少し背伸びしながら俺の耳元へ口を近付けると
「今度は彼女さんも一緒に連れて来てね?」
言い終わると子供っぽい笑顔を浮かべて何度か手を振った
「……また来ます」
彼女…ね
俺は苦笑いで返すと軽く会釈をしてようやく店を出た