この腕の中で君を想う
仔猫の戸惑い
-佐藤眞理side-
あれから私は冬夜に引きずられるように校舎の中へ入った
冬夜の歩幅が広くて何度も転びそうになるが、それに気付いてないのか冬夜は構わず歩き続ける
そんな私達をみんなが好奇の目で見ていて、自然と頬に熱が集まった
「……ねぇ」
「………」
「ねぇってば!!」
「…んあ…なに?」
何度目かの呼び掛けにようやく立ち止まり、気の抜けた返事をする
「手…痛いんだけど」
「え…?あ、ゴメンッ!!」
そういうと冬夜は慌てて手を離して、そのままポケットに突っ込んだ
「……」
「……」
廊下の先に教室が見えているが、私達は立ち止まって暫く黙りこむ
時間はおそらく数十秒か、数分か分からないが、とにかく空気がはりつめていた
ふと、冬夜を見れば目が泳いでいて目が合うと何か言いたそうに口を開閉させて
「……ッ」
やがて決心したのか、真っ直ぐ私を見据えて大きく息を吸った
「あの、さ…」
キーンコーンカーンコーン
タイミングよく予鈴のチャイムが鳴り響き、張り巡らされた緊張の糸が少し解ける
「…あ、予鈴鳴ったし、先に教室に行くね!!」
ごめんね
今の私は頭の中がグチャグチャで何も話せないから
そう心の中で謝り、早くこの場から離れようと冬夜の横を通り過ぎて教室へ向かおうとした
刹那
「…明日の放課後、教室で待ってて。話がある」