この腕の中で君を想う


「…嘘」

「嘘じゃないわよ。タオルの替えも眞理ちゃんがしたのよ?」

じゃあ…あの時見たのは本当に

"冬夜"

「……っ‼」

俺は慌てて立ち上がると、先程床に放ったタオルを拾う

…まだかなり冷たい

ほんとに…ついさっきなのか


「……出かけてくる」

眞理に…今会わなければいけない気がした

「ちょっ…待ちなさい!」

ガシッと母親が俺の腕を掴む

「…離せよ」

「貴方達…何かあったの?」

その目は何処か真剣で…俺は一瞬言葉に詰まる

「…何もない」

別れた事は…何故か言えなかった

「…すぐ帰ってくる」


俺は母さんの腕を振り払うと

近くに掛けられてあったパーカーをひっ掴むと、部屋を飛び出した



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