この腕の中で君を想う



「え…」



勿論私が言ったわけではない


ゆっくり顔を上へ向ければネオン街には似つかわしいきっちりと着こなした黒いスーツ姿の男が立っていた


どうやら酔っぱらいではないようだ


「なんだ、てっきり泣いているのかと思ったんだが」



フンと鼻で笑われて流石に腹が立つ



「…私がフったんです」


強がって嘘をついてみるが、男はククッとくぐもった笑い声を出して



「やっぱりお前とは無理。とか言われた奴がフった…ねぇ」


「なっ…見てたんですか!?」



最悪


信じられない




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