この腕の中で君を想う




「早く着かないかな…」


少しばかり息が荒い男からほんの少し距離をとって、呟く


「………」


何を思ったのか、冬夜は突然スッと立ち上がって



私の手を吊革から離れさせると、冬夜の座っていた場所に半ば強引に座らされた


「…え…何して…」


「座っとけ」



私が握っていた吊革に手を掛けながらぶっきらぼうに言う



「…ありがと」


やっぱり冬夜は優しいままだ


にやける顔を必死に繕って冬夜にお礼を言えば


「…この前、別れるにしても言い過ぎた。だから謝罪も兼ねて」


私を見て軽く笑うと、窓の外へ視線をうつした



「…冬夜」


どうしよう


嬉しすぎる



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