君と出逢った
父は恋人とくらすと出て行き、母は仕事漬けで海外をとびまわる。
父と母から贖罪の用にたっぷりと金が入る。
その額は月40万円。
学費は特待生で免除。
家も2DKの新築。
煩わしい親子関もなく。
使えるお金はたっぷり。
僕はそれを生命保険と自分名義の貯金に大半まわす。
あとは教科書に参考書。
これでも有名私立女子校の優等生。
家庭教師のバイトをしている。
なかなかどうして多忙である。
が、今日はバイトなかはないし亜里沙がくる。
もともと殺風景な部屋に軽く掃除を施し、僕はキッチンに立つ。
悩み事のある女の子にはとりあえずお菓子だ。
とけいは16時を示している。

よし、アップパイとジンジャークッキーをつくろう。
パイ生地は作り起きの冷凍だし、クッキーも焼くだけだ。
亜里沙がくる頃には出来上がっているだろう。
何のグチか知らないが、友人と言えども人の不幸は密の味。
にやりと嘲笑して僕はキッチンに立つ。
亜里沙の不幸はどんな味?
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