ストーカークラブ
 美奈子の後姿が見えなくなった後、陽一が話し始めた。


「なぁ、病院とは逆の方向に歩いて行ったな。しかも病院は隣りの駅の方が近いしさ。それに気になったのは、彼女が歩いてきた方向って、信太の家があるよな?」


 そうだ! 美奈子が歩いて来たのは俺の家がある方向からだ……。まさか……。


「病院じゃなくて、俺の家に行ってたのか?! 一度も部屋に上げた事ないのに」


 そう言って青ざめた信太を心配したのか、陽一は少し笑って、


「美奈ちゃんって、信太の歴代の彼女には居ないタイプだな〜」


 と言った。二人で顔を見合わせ苦笑した。


「後で探り入れてみるよ。美奈子が犯人の可能性も捨てきれない」


「そうだな」


 ここから病院まで行って、絶対に往復できない時間で、美奈子は戻ってきた。


「じゃ俺は帰るよ。信太またな」


 陽一が帰ると、信太は美奈子を駅まで送って行った。


「美奈子、駅とは逆の方向から歩いて来て、俺と会った後は病院と違う方向に歩いて行ったけど、どうして?」


「あぁ、それは道に迷っちゃってね。それで病院行くのは、私あの道しか知らないから。あっちからでも病院着くんだよ〜」


 しら〜っと嘘を言う。
 信太は地元だから、それが嘘だとすぐに気付き、バレバレなのにと内心呆れていた。

 駅の改札口に着き、別れ話しをするなら今がチャンスだと思った。


「話しがあるんだけど」


 と真剣な顔で言いかけると、美奈子は信太の言葉を遮る様に、


「あっ電車来ちゃうよ〜じゃまた明日ね」


 足早に改札を通り、行ってしまった。

 仕方ない、明日もう一度別れ話しを切り出すか。

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