ストーカークラブ
 一体誰なんだ。俺は誰も裏切っちゃいない。そう思った時、横でメールを覗き込んでた陽一が言った。


「なぁ、これってさ、信太に対しての、逆恨みの様な気がする。昔、女から告白されてさ、あっ勘違いするなよ! 自慢話しする訳じゃないからな。俺はその女を好きじゃなかったから、ハッキリ断ったんだ。そしたら、私を振るなんてヒドイ! 裏切り者ー! って泣かれた事あったんだよ。メールの犯人は、それと同じ様な気がするんだよな。思い込みが激しいというか、自分勝手というかさ」


 信太は陽一の話しを頷きながら聞いていて、ふと思った。


「おかしくないか? もし、このメールを送ってきた犯人が、美奈子だと仮定したら、この文章はやっぱりおかしい」


「そうか! 信太から別れ話しをされる事を避けて、別れたくない美奈ちゃんが、別れろとか、別れなければ裏切りになるなんて変だ! メールの内容は美奈ちゃんの気持ちと矛盾する事になる」


 少なくとも、脅迫メールの犯人は美奈子じゃない。メールとボイスチェンジャーの脅迫内容が同じだという事は、この二つの犯人は少なくとも美奈子じゃないのだろう。

 その他、携帯の非通知や、自宅への無言電話は誰が?


「信太、自宅の電話番号知ってるのは限られてるよな?」


 信太が頷くと、陽一は勢いよく立ち上がった。


「今からお前ん家行っていいか? 俺に考えがある」


 そう陽一に言われ、二人で信太の自宅に向かった。

 しかし、信太達より先に、信太の自宅へ向かっていた人物がいるとは、その時の彼らは知るはずもなかった。


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