ストーカークラブ
第三章　ボイスチェンジャーの脅迫
　待ち合わせに少し遅れて行くと、美奈子は珍しく文句も言わず駆け寄ってきた。


「新しく出来た店があるから、まずはそこでコート買って〜、その後ご飯食べ行こ！　ねぇ信太、聞いてる？」


　美奈子が口を尖らせている。
　信太は、ぼーっと考え事をしていた。


「ゴメン！　美奈子には何色のコートが似合うのか考えてたんだ」


　嘘も方便。本当に考えてる事を話すのは躊躇した。


「な〜んだ。じゃ行こ行こ」


　そして美奈子がコートを選んでる間も、信太は考えていた。やはり脅迫メールは美奈子に好意を寄せている奴だろうか？


「ねぇこれにしようと思うんだけど似合う？」


　美奈子が試着していたのはバブル時にホステスが着ていたであろう、紫の毛皮みたいなコートだった。内心「うわっ」て思ったが、ここで否定したもんなら泣き出すか切れるかする気性なので、信太はにこやかに微笑みを作り答えた。


「いいんじゃないかな。似合ってるよ」


　ご機嫌の美奈子は紫のコートを買い、お腹すいたと言いながら信太をレストランに引っ張って行った。


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