王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
「どういう事だ……?」

 レイン。かつてのドラゴン討伐のメンバーである。

 あの時は両眼に包帯をしていたが……氷眼の民、特有の透き通った氷蒼の瞳ではなく、黄金色をしていた。

 彼が特別な存在であり、それによって討伐隊に選ばれた事は当然だが。その少年が何故ここに?

 ベリルは家に足を向けた。その後ろ姿をセシエルとヴァラオムは見送る。

「……」

 木のドアをゆっくり開いて奥に進むと、暖炉の横にあるテーブルセットの椅子にレインがそっぽを向いて座っていた。

「……」

 無言の時間が続く。ふいに、

「ここに来て……」
「!」

「ここに来てから、目を隠す必要が無くなったんだ。何かでさえぎっておかないと、力が抑えられなかったから」

 流浪の民の中にいると、不思議と力が暴走する事が無い。
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