王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
 その流れるような闘い方に、リンネラはすっかりベリルに見惚れてしまい彼を無理矢理、自分の家に長期間滞在させた。

「その時に譲り受けたハープだ」
「弾けるか?」

 その言葉に、ベリルは椅子に腰掛けハープを構えた。

「あまり上手くはないぞ」

 音を確かめ気を落ち着かせる。

 その指からつむがれる音色──彼の心そのままに、落ち着いた調べと時折響く鋭い旋律。

 静かな夜をいっそう優しく包み込む。

 それは母の腕の中……子どもを抱く夜の腕。

「……」

 弾き終えて小さく溜息を吐き出す。

「さて食べようか」

 そう言って立ち上がったベリルの背中を見つめるレイン。

「手伝え」

 キッチンの方から響く声に、レインも立ち上がった。
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