王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
「充分な価値ではないと?」

 ベリルが冷静に問いかける。それに、待ってましたとばかりにリュシス王はベリルに目を合わせた。

「貴殿は流浪の民と見受けるが」
「いかにも」

「闘いに長けた民族と聞き及んでいる」
「恐れ多い事です」

「1つ面白い事をしないか?」
「なんでしょう」

 流浪の民を持ち出した。聞かなくても大体解っている。

 リュシスが右手を軽く揚げると、近衛の1人が前に出た。

「サハネル。我が兵の中で最強の強さを持つ。どうだベリルとやら、彼と闘ってみたいとは思わんか?」

 やはりそうきたか。ベリルは緩く腰を曲げて右手を胸に当てる。

「私でよろしければ」

 ヴァラオムは必死に笑いをこらえた。あのベリルが、まともに相手などするハズがない。

 どうなっても知らんぞ、あのサハネルという男。

 サハネルとベリルは訓練場の真ん中に向かい合わせで立つ。

 互いに抜かれた剣に、王が反応した。
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