王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
「随分な自信ではないか」
「そういうものではございませんよ」

 言いながら剣を抜き、柄を王に向けた。リュシスは緊張しながら柄を握る。

「!」

 不思議な感触。持ち上げると予想よりも軽く体に馴染むようだった。

 しかしすぐ──

「!? うっ」

 リュシス王は剣を投げ落とした。それに表情を変えずベリルは剣を拾い上げる。

「お解りいただけたか?」
「……意思を持つというのか」

 リュシス王が剣を持った途端、剣の感触は嫌なものに代わり重くなった。

 諦めきれない王が次に口を開いたのは……

「ならば、貴殿と共に迎えよう。それなら文句はあるまい」

[いいからアダマンタイトのナイフとウロコで我慢しろ]

 終らない交渉にヴァラオムが業を煮やした。ベリルは小さく溜息を吐き出す。

「おい。折角、楽しんでるのに邪魔をする奴があるか」
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