王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
「? 姉上、何をしているの?」
「シッ! 黙って」

 ドアの鍵穴に目をこらしている少女に、10歳ほどの少年が首をかしげて問いかけた。

 15歳ほどの栗毛の少女は、浴場の鍵穴を覗いていたのだ。

 母親と一緒に屋敷に来た2人を遠目で見て、その優美さに呆然となった。

 ハインツが浴場に案内した事を知り現在、そこを覗いているという訳である。

「お?」

 ドアを開くと、少女と少年がいてベリルは声を上げた。

「こっ、こんにちは」

 少女は慌てて挨拶した。ちょこん、とドレスの端を持ちはにかみながら。

「こんにちは……」

 少年は少し戸惑いながら頭を下げる。

[可愛いお二人さん]

 ヴァラオムはにこりと笑って、

[奥様かご主人はどこかな?]
「こ、こっち!」

 少女は頬を少し赤らめて2人を案内した。
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