王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
 そして、決心したように長老の家に足を向けた。

“コンコンコン”

「誰じゃ」

 ドアが開き、入ってきたベリルに向き直る。

「どうした、こんな夜分に」
「……話したい事がある」

 老人は、ベリルを家の中にうながし暖炉の前で立ち止まる。

 しばらく、2人は向き合い沈黙した。パチパチと、静かな空間に響く音。

「私は──」

 言い出そうとしたベリルに、長老は右手で制止した。

「何を言いたいのかは解らんが、言う必要は無い」

「……」

 見つめるベリルから視線を外す。暖炉の前にあるイスに腰掛け、小さく溜息を吐き出した。
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