王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
[これだけハッキリした幻影を使う者だ。かなり厄介だぞ]

 ヴァラオムはあごに手をあてて低く唸った。

「……」

 ベリルは小さく溜息をついて剣を鞘(さや)に仕舞う。

「しかし捨て置く訳にもいくまい」

 言いもって馬にまたがった。それからしばらくゆっくりと馬を進める。

「!」

 遠くに何か見えてきた。それはそびえ立つ城のような雄大な建物。

 鉄格子がぐるりと取り囲み、門は頑丈で豪華な造り。

 門は、ベリルを招き入れるかのように独りでに開いた。

[さしもの、あの幻影の主かな]
「だろうな」

 ベリルは馬を下りて門をくぐる。入り口の前にある杭に手綱を絡め、扉に目を向けた。
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