王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
 日も暮れかけた頃、ベリルとヴァラオムはよろよろと1軒の店から出てきた。

[ま……まさかこんな事に……]

「私が王都にあまり来たくない理由がわかっただろう」

 2人は肩を落としてひとまずテイシンの家に向かった。

 大家に説明して鍵を開けてもらう。テイシンが事前に大家に話してくれていたようで、快くドアを開けてくれた。

 2人はぐったりとして、ふらふらとベッドルームやテーブルに各々歩みを進めた。

 夜もすっかり更けて、星々が空を彩る。

「ただいま~」

 テイシンが覇気のある声で帰ってきた。しかし、目の前に窓際のテーブルにつっぷしているベリルの姿。

「どうした?」

 その声に、ベリルが力なく頭を上げる。

「いや……ちょっとパスコにな」
「! パスコ。またなんかやったか?」

「さすがにあの量は……」
「どんだけ作ったんだ?」

 ベリルは指折り数えながら、

「ん~……アップルパイにチョコチップクッキーにシナモンクッキー。マフィンとフィナンシェ。スイートポテト他多数」
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