王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
「……おじゃましま~す」

 律儀に声をかけて城の扉を開くテイシン。重苦しい雰囲気に、思わずそうしてしまった。

 美しい彫刻が立ち並び、高そうな絵画が壁に飾られているエントランス。

「そういやあいつ……花嫁とか言ってなかったか?」

 なんか嫌な予感がするなぁ……テイシンは恐る恐る、上に伸びる階段の手すりに手をかけた。

「女と間違えるなんて事ねぇだろうしな……さすがにそこまで女には見えない」

 男から見ても綺麗だとは思うが、抱きかかえた時点で男なのは解るハズだ。

「じゃあ……やっぱ男だと解っててさらっていったのか?」

 てことは……あいつ『アレ』か。

「あいつも災難だなぁ……」

 なんとなく納得してしまっているテイシン。

「ま、とんでもない事にならないうちに助けてやるか」

 赤い絨毯(じゅうたん)の敷き詰められた大きな階段をゆっくりと上る。
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