王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
「……う」

 静かに目を冷ましたベリル。

「お目覚めか。花嫁よ」
「花嫁……?」

 上半身を起き上げる。

「……」

 視界に入ってきたのは純白のドレス……を、着た自分の下半身。

 眉をひそめてまじまじと確認する。丁寧な事に靴はハイヒールだ。

 よく男の足に入るハイヒールがあったものだ。と、半ば現実逃避気味にベリルは思った。

「何の真似だ?」
「君は俺の花嫁に選ばれたのだ」

 ベリルの眉間にますます縦じわが刻まれる。

「男だ」
「解っている」

 そしてマントをひるがえし、喜びに満ちた声を上げた。

「では式を始めよう!」

 ベリルの意思など聞く耳持たず。

「……」

 ベリルはこれ以上無いくらいの深い縦じわを刻んだあと──

“バキ!”
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