王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
「モンスター界も終ったな」
「いいから離れろ!」

 艶やかな黒髪に黄色の瞳。青白い顔色でテイシンを睨み付けた。

「どうすんだよ」
「……うーむ」

 しばらく考えて、テイシンを一瞥(いちべつ)。

「とにかく、彼には諦めてもらわねば」
「おう。どうやって?」

 訊ねた瞬間、理解した。ベリルがテイシンの首に両腕を絡ませたからだ。

「!?」

 ヴァンパイアはそれに激しく反応した。

「すまないが諦めてくれ。彼は私の恋人なのだ」

 ほら、早く演技しろ。ベリルが小声で促した。

 テイシンもこういう事は嫌いじゃない。一世一代の大芝居を打ってやろうじゃないか!

「俺の恋人を返してもらうぞ!」
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