王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
 効果はてきめん。ヴァンパイアの手は震えて、哀しみの表情を見せた。

 よし、あと一息で終わりだ。ベリルは内心、ほっとしていたが──

「諦めるものか……折角探し当てた花嫁なのだ!」

 あれ、意外と頑固だな。冷静な判断をしていたベリルに、テイシンはガシッと彼の肩を強く掴んだ。

「俺だって! 彼は世界でたった1人の俺の恋人だ!」

「……」

 ノリ過ぎだテイシン……

 どうやらテンションが上がってしまい、もうベリルの声は聞こえないらしい。

「お前なんかに渡さないぞ!」
「! まっ……!?」
「!! なんという事を!」

 数秒暗転──

「よくも我が花嫁の唇を奪ったな!」
「唇どころか色々と奪ったわ!」
「……」

 げんなりとしながら、口を手の甲で拭うベリル。

「……」

 テンション上がると見境がないのかこいつ……
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