王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
 1人、抜きん出た存在のベリル。サナが生まれる3年前に彼はこの集落に、長老によって連れてこられた。

 金色の短髪にエメラルドの瞳。独特の雰囲気を持つベリルに、皆はいちもく置いていた。

 まるで、どこかの地位ある出のような口調と上品な物腰は、拾われた時にはすでに定着していたものだ。

 そんな彼を同じ年頃の子どもたちは敬遠していたが唯一、セシエルだけはその愛くるしい輝くような笑顔でベリルに接していた。

 そのせいもあってか、今では2人は親友と呼べる仲である。

 シルヴァブロンドの輝く髪と赤茶色の大きな瞳。いつもニコニコとしているセシエルは、集落の人気者だった。

 彼は剣ではなく、クロスボウという機械式の弓を得意とする。

 これから旅立つベリルとは違い、セシエルは集落に残り子どもたちに剣術を教える者となる予定だ。

 それぞれの生き方、それぞれの意志。

“ザアァァ……”

 風が、ベリルの短い髪を揺らす。
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