王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
「お前優し過ぎ」

 テイシンはぶつくさベリルに言いながら城をあとにする。

「……」

 テイシンの前、馬の背にまたがったベリルに怪訝な顔をした。

「なんで横座り」
「この服だとまたげないのだ」

 純白のウェディングドレスに身を包んだベリルが溜息混じりに応えた。

「仕方ねぇな~」

 馬を走らせる。

「……」

 その様子を、レクシェは目を細めて高い窓から見送った。

 とりあえず、この格好は俺も恥ずかしい。テイシンは思って街に入ると、いっそう馬の足を速めた。

「! ありゃテイシンじゃないのか? 花嫁さん乗っけてるぜ」

「テイシン結婚すんのか……?」

 割と有名人であるテイシンを街の人々は目で追う。

 そんな目立つ姿に、噂は瞬く間に広がった。
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