王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
「なんですって!? テイシンがっ?」

 1人の女性が声を張り上げる。

 彼女の名はニッツー。淡い栗色の髪は緩やかな巻き毛で、橙色の瞳。厚い唇がなまめかしい娼婦だ。

「どういう事よ!」

 言って娼婦宿から凄い勢いで飛び出した。

 テイシンとは知人であり複雑な関係でもある。

 ナイスなバディを揺らしながらテイシンの家に向かう。

 バン! と、入り口を力任せに開き、遠慮のない足音で階段を上る。

「ちょっとテイシン! あんた……っ」
「あ……」

 そこにいたのは純白のドレスに身を包んだベリル。まだ差し込んでいる月明かりに照らされて、ニッツーは少しクラリときた。

「あ~疲れた」

 ドンピシャなタイミングで、テイシンが馬を返して帰ってくる。

 見慣れた後ろ姿にギクリとした。

「テ~イ~シ~ン~」
「ニ、ニッツー……」
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