王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
 ゆっくりと振り返ったニッツーの顔が怖い。

「あんた! こんな趣味があったの!?」

 テイシンの胸ぐらを掴んで激しく揺する。

「こ、こんな趣味ってなんだよ……」
「しらばっくれないでよ!」
「待て待て……」

 踏み込めないような雰囲気だったが、ベリルは女性の肩を軽くポンポンと叩いた。

「何よ」
「誤解している」
「そうだ、誤解だ」

 2人はなだめながら説明を始めた。

「あら……そんな理由が」
「そういう訳だ」

 ようやく解ってくれたニッツーに、テイシンはほっとした。

「ごめんなさい。ほほほ」

 そんな彼女にベリルも苦笑いを返す。

「にしても、凄いヴァンパイアもいたものねぇ。ホモだなんて」

 ベリルの姿をまじまじと見つめながら、ニッツーは感心するように口を開いた。

 思い出してげんなりするベリル。

「でもあなた。女装館だとナンバーワンになれるわよ」

「言ってくれる……」

 ベリルは頭を抱えた。
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