王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地
「じゃあ私、仕事に戻るわ」
「ああ、その前に」

 帰ろうとしたニッツーに背中を示して、

「外してくれないかね」
「ファスナーね。OK」

 ニッツーはベリルのドレスのファスナーを下げていく。

「……」

 あらわになった背中を見つめ、ツツツー……指を背筋に走らせた。

「!?」

 ぞわっ! 驚いてニッツーに丸くした目を向けた。

「あら、ごめんなさい。綺麗な背中だったんでつい」

 イタズラっぽく笑う。

 ヒラヒラと手を軽く振って、ニッツーは帰って行った。

 ベリルは深い溜息を漏らし、着替えるために部屋に向かった。

「……まだ寝てら」

 気持ちよさそうにベランダで寝ているヴァラオムに目を据わらせるテイシン。


 そうして夜は更けていく。

 ベリルの受難は永遠の命にあらず──

 彼は今日、悪夢を見る事だろう。

 自分を取り合う男たちの夢を……
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