六人に届いた手紙
 約束の時間までは余裕があったので、優子と幸子は手紙について話している。


「優子は誰が書いたと思う? まさか加奈の幽霊って事ないよね?」


「幽霊か……。信太と翔が海で加奈を見たって言うんだよね……」


「嘘〜〜〜っ! でもそうだったら、幽霊が手紙を書いたって言うの? それか、私達六人の中の誰かがイタズラで書いたって事ないかなぁ。でもそれなら優子が電話した時、名乗り出ても良かったよね」


 本当だ。もし六人の中の誰かがイタズラで手紙を書いたとして、何もやましい事がないなら隠す必要性はない。やはり幽霊なのだろうか?


 あれこれ話してるうちに家を出る時間になってしまった。


「翔、パパの言う事聞いておりこうさんにしててね。ママ明日には帰って来るから」


「うん。僕おりこうさんにしてるから早く帰って来てね」


 翔を信太に頼み、玄関を出ようとすると、


「優子、幸ちゃんも、何かあったら電話しろよ! (丸山旅館)は、こっから車で一時間
もかからないんだから、すぐ飛んで行ってやる!」


 信太は真剣な顔をしていた。昔のストーカー事件を思い出したのかもしれない。それは優子も同じだった。

 見えない闇に放り出された様な奇妙な感覚……。

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