六人に届いた手紙
 優子と幸子はバスで(丸山旅館)に向かった。(丸山旅館)は市内からも自宅からも離れていて、周りは山に囲まれ海が見えない位置に建っている旅館だ。

 (丸山旅館)に到着し、時計を見ると午後二時五十分。

 女将に挨拶をされ部屋へ案内される途中、優子はすかさず旅館を予約した人物を尋ねたが、予約は電話であり、声は女とも男とも判断出来なかったそうだ。そして料金は既に支払われている様である。

 優子は嫌な予感が増した。

 通された部屋に入ると、そこは宴会場で、亜紀と恵子が広すぎる部屋の真ん中にぽつんと座っていた。他の二人はどうやら遅れてくるとの事。のんびり屋の沙也加を心配して朋子が迎えに行き一緒に来るらしい。

 あえて優子と幸子は、全員揃ってない事もあり、手紙の件には触れずにいた。
 四人で久しぶりの再会に話しが弾んでいると、午後三時三十分頃、朋子と沙也加が到着した。
 相変わらず、のんびり屋の沙也加が息切れしながら、

「朋子って相変わらずせっかちでさぁ、遅くなっちゃうって言いながら、途中で走るんだもん酸素不足だよぉ」

 と言った事で、皆一斉に笑いが漏れる。
 久しぶりに会ったのが嘘の様に、盛り上がっていた。

 しばらくして女将が、料理とビールを運んで来たのだが、女将が去った後テーブルに並べられた料理を見て全員が黙った。料理が一人前多い……。
 それを見た朋子は金切り声を上げた。

「何なのこれ! 一人分多いじゃない! 私達六人しか居ないのに、イタズラにも程がある!」

 そう叫んで女将の所に駆け出す朋子を、優子は慌てて追いかけた。
 朋子が女将に掴みかかる勢いでまくし立てると、女将は言った。


「予約して頂いたお客様に、七人分の料理を頼まれたんですよ。もう料金も頂いてますし……」


 女将は困っている。


「分かりました。お騒がせしてすみません。行こう朋子」


 優子は女将に謝り、固まってしまった朋子を支えて宴会場へ戻った。

 一体予約した人物はどういうつもりなんだろう。
 加奈の命日にこだわって七人分の料理を頼んだのだろうか? 加奈の幽霊だとして、幽霊ってお金を持ってるのだろうか? 朋子の取り乱し様も普通じゃないし。

 少しずつ、少しずつ闇が忍び寄ってきていた。

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