六人に届いた手紙
「私達に手紙を書いたのは、加奈の幽霊なんかじゃない。もちろん朋子に嫌がらせをしたのも、全て生きている人間がした事」


「何でそんな事言い切れるの?」


 亜紀はいつも通り、冷静に訊いてきた。


「犯人が分かったの。加奈が亡くなって、十一年目に復讐をしようとした理由は分からないけど」


 優子は震えそうな足に力を入れ、平静を装っていた。


「犯人って? 誰なの? 幽霊じゃないなら誰なの?」


 恵子が珍しく早口で聞いてきた。余程驚いたのだろう。


「まず始めに、私の家族が海で加奈を見たって言うのは、実際は加奈じゃない。加奈と同じ髪型のカツラを着けた別人。そして、加奈の名前で手紙を出した人物は、私がみんなに手紙の件で電話をしていた時、すでに島に来ていた。もしかしたら下見だったのかもしれないし、私に見られた時の為に、カツラをしていたのかもしれない」


 皆は黙って優子の話しを聞いている。
 一呼吸置いて、話しを再開しようとすると、


「優子は、犯人がこの中の誰かだって言いたいんでしょ?」


 亜紀がそう言うと、沙也加が泣きそうな声を出した。


「えぇ。嫌だよそんなの……優子ヒドイよ。聞きたくない」


「誰だって嫌だよ。それに、話してる優子だって辛いんだよ。でも友達として、真実を知って、逃げないで向き合わなきゃいけないと思うから……。最後まで話し聞こうよ」


 幸子が優子の気持ちを代弁してくれた。ありがとうと優子は心の中でつぶやき、話しを再開させた。

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