六人に届いた手紙
第八話 涙の真実
 優子は再び話し始めた。


「朋子達の部屋に、カツラが投げ入れられた後、六人が私と幸子の部屋に、揃って話してたでしょ? その時、一人だけが朋子を見る目に憎悪を宿してた。そしてその人物は、朋子が落ち着くと真っ先に幽霊話しを持ち出し、毎回朋子を余計不安にさせていたの。決定的だったのは、私と幸子が冷蔵庫のビールを飲み尽くし、私がフロントに貰いに行った時の話し。一階の廊下を走り、大浴場と二階へ行く階段がある角を、曲がって行った人影を見たの。私は気になって、その方向へ行くとバッタリ大浴場から出てくる恵子と会った。それから恵子と一緒に、大浴場の近くの階段を上がると、二階の廊下を歩く女将さんの後姿が見えたの。その時は分からなかったけど、女将さんは、例の箱を、朋子達の部屋に届けた直後だったんだと思う。そして、恵子がみんなの前で、私と一階で会った事を話した時、たった一人だけ明らかに狼狽していた。多分私に見られたんじゃないかって焦ったんだと思う。私と幸子は気付いたの。全てが繋がって、どう考えても犯人はその人物一人だった」


 そこで私は、深呼吸をしてから続けて言った。




「ねぇ、どうしてこんな事をしたの? 亜紀」


 亜紀は俯いて黙っていた。

 すかさず沙也加が泣きながら、


「何で? 何で亜紀が?」


 しばらくすると、亜紀が涙で濡れた顔を上げて、ゆっくりと話し始めた。



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