雪灯りに響く音



「…っていきなり言われたのよ!? 腹立たしいったらありゃしないッ!!」

数日後、カフェテリアで愚痴を零す私は友人の梨華にどうどう、と宥められる。…が、生憎と私はそんなに心の広い人間じゃない。

「落ち着きなって。そんな怒ると可愛い顔が台なしだよ?」

「今はそんな事を気にしている場合じゃないのよ! アイツ、次会ったらただじゃおかないんだから…!」

「でも初対面でそんなあからさまにケンカ吹っかけられるのも普通じゃないね…美麗、アンタなんか恨まれるような事したんじゃないの?」

梨華の問い掛けに、私はむぅと言葉を詰まらせる。
それなら今日まで散々考えてきた。一分の見落としもないように、それこそ洗いざらい。…でも、

「分からないわ。過去に私が佑に会った覚えもないし、もちろん恨まれるような事もない。…だから余計にムカつくのよ。」

黒江 美麗、それが私の名前。
勉強も運動も、容姿だって平均的。
唯一、自信を持って特技だと言えるのはフルート。
小さい頃からコンテスト上位常連である藤原先生に教わって早12年。
その間に私の実力は目に見えて向上し続け、ついには数年前にフルート界から引退した先生の代わりとばかりにコンテスト上位常連組にまで上り詰める事に成功した。
自分で言うのもアレだけど、良くやっている方だとは思うわ。


,
< 5 / 7 >

この作品をシェア

pagetop