溺愛ラバーズ
「じゃあ、実家に?」





左右へと首を振る社長。





「家から出て行ったんだ。」


「なっ!?」


「ここには居たくないと言ってね。大切な人と2人で幸せに暮らしたいと。」


「………。」


「私も妻も必死に説得したが、許してくれないなら雨宮家を出て行くと言われてね……。」





今の話全てを嘘だと言って欲しい。





婚約解消なんて………嘘だろ?





社長室を出た俺は一旦課に戻り、早退すると言って鞄を持ち会社を出た。





まりあに会って話を聞きたい。





社長はもう出て行ったと言ってたが、まだいるかもしれない。





それだけを思い、いそいで家に帰った。





ロックを解除し、玄関を開けると家の中は静か過ぎるほどだった。




靴を脱ぎ捨て廊下を歩く。





キッチン、風呂場、ダイニング、リビング、俺の部屋、まりあの部屋、全て見て回ったがまりあの姿がどこにもない。





ただ、でかけてるだけなんだと思いたかったがそれも望めなかった。





まりあの部屋にはなにもなかった。




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