溺愛ラバーズ
「あの……帰ります。」


「まりあ…。」


「樹さんに会えてよかったです。」




お腹を庇いながら立ち上がり空いてる手で涙を拭いながら話すまりあ。





「ちょっと待て。こんな寒い中1人で帰る気か?旦那に電話して迎えに来てもらえ。」


「だん、な?」


「結婚してるんだろ?」





目を見開くまりあに思わず眉間に皺が寄る。





「結婚、してませんよ。」





この言葉に勢いよく立ち上がり、まりあに詰め寄った。





「どういう事だ?妊娠してるんだよな?」


「はい。」


「相手は?」


「…………。」





躊躇いチラリと視線を上げたまりあにドクンと鼓動がなる。





「もしかして……俺、なのか?」





暫くしてコクンと頷いたまりあをきつく抱き締めた。





「本当に?」


「はい…ごめんなさい。言わないつもりだったんです…。樹さんに会うつもりもなかったし、私にそんな資格がないんです。」





それは俺のセリフだ。





今になってまりあに縋る情けない男なんだ。




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