溺愛ラバーズ
「ここ座りなよ。」





どうやら席を取って置いてくれたみたいだ。





「すいません、失礼します。」


「高杉くんも愛妻弁当か〜いいな。」





そう言った三井さんは社食だった。





「三井さんは違うんですか?」


「俺は弁当なんて作ってもらった事ないな。」


「はぁ……そうなんですか。」


「ありさは料理だけは苦手なんだよ。ありさってのは奥さんね。」





ニヤケた顔の三井さんなんて始めて見た。





「今はしょうがないんじゃないんですか?子育てに大変なんですよ。」


「まぁね〜、嫉妬する毎日だよ。」


「あの………三井さんって子供いたんですね。」





結婚してるんだからいてもおかしくないんだが、意外だった。





「これが、奥さんと息子。」





見せてもらった携帯の待ち受け。





切長の目に八重歯が印象的な女性と三井によく似た小さな男の子が写っていた。




「三井さんの奥さんって……妹さんに似てますね。」

「そうなんだよ〜。性格も似てるかも。」





それを聞いて、まりあで良かったと思った。





なんて事、三井さんには言えない。
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