溺愛ラバーズ
特別な意味はないが、結婚するなら大人しそうな子がいい。





そう――――――あの子に似た……。





「あの〜高杉課長?」





ゆっくりとした声が聞こえ、隣を見ると女性社員が弁当と俺の顔を交互に見ていた。





「なんだ?」


「お弁当…自分で作ったんですか!?凄いですね!」





女性社員を釘付けにしている弁当。





ご飯を詰めてふりかけだとか梅干しじゃなくて、海苔の巻いてあるおにぎり。





レタスが引いてあり、その上に小さなハンバーグ。





タコの形をしたウィンナーに綺麗に巻かれた玉子焼き。





真っ赤なプチトマトもウサギ形に切られたリンゴも入ってる。





こんな手の込んだもの自分で作れる訳がない。





「彼女だよな。」





俺が言う前に三井さんが答えてしまった。





「そうなんですか……。」




そう呟いて、女性社員は離れて行った。





わざわざ弁当の事を言いに来たのか?





「高杉くんモテるね〜。」

「まりあちゃんが嫉妬しますよ?」





モテるって……三十路前の男がモテるわけがない。



< 29 / 213 >

この作品をシェア

pagetop