幸せな結末
一体どうしたんだろう?

そう思っていたら、
「美香…」

呟くように、一也さんが誰かの名前を言った。

「えっ?」

思わずそこに目を向けると、
「久しぶり」

マンションの壁にもたれて、ニコリと笑う女の子が立っていた。

黒髪のショートカットが夕陽に照らされて茶色っぽく見えた。

小さくて華奢な躰。

腕なんか、力を入れたら折れるんじゃないかって言うくらいに細かった。

そんな彼女の足元には、ボストンバッグがあった。

「――お前、何しにきたんだよ…?」

信じられないと言うような震えた声で、一也さんは尋ねた。

「何しにって、家出じゃん」

女の子は首を傾げ、目をパチクリさせた。

そんな彼女に、一也さんは呆れたように息を吐いた。
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