幸せな結末
そんな美香ちゃんに、一也さんはまたため息をついた。

今日で何回目のため息なんだろうと、私はそんなことを思った。

「それで、何で家出したんだ?」

一也さんが聞いた。

「別に、ただオカンとやりあってきただけ」

はあっと呆れたように、美香ちゃんは息を吐いた。

「おばさんはお前が俺のところにいることを知っているのか?」

そう聞いた一也さんに、
「いや、知ってたらカッチンのところにこないし」

美香ちゃんが言った。

“カッチン”と言うあだ名は、一也さんのことだろうか?

「はっ?」

何かに反応したように、一也さんの片眉がピクリと動いた。

「あたしがこの街にきてること自体、母さんは知らないよ?」

美香ちゃんは挑発的な笑みを見せた。
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