妄想な彼女
――審査員控え室
椅子に座り退屈そうにしている30代くらい男性がいた
ガチャ
そこへ50代のおじさんがハンカチで汗を吹きながら入ってきた
「いやいや…浅生さん。遠いところをようこそ。」
「地元に帰ってくるのは久しぶりですね」
彼はまた退屈そうに目の前にあったコーヒーカップをくるくると回していた
「忙しいのにわざわざすみません。」
「いいんですよ。舞台の公演までまだ期間があるわけですし…」
浅生は50代の男性をじぃっと見た
男性は体を強ばらせた
「それに“たかが”高校生の演劇大会を見た方が初心にかえれますし」
トゲのある言い方だったが50代の男性はあえて気にしなかった
彼はこうゆう人だと前もって知っていたからだ
「いやいや。でも、我が市出身で有名な浅生徹さんが演劇大会の特別審査員なんて…
学生たちきっと喜びますよ!
話によると…浅生さんは高校の時から演劇をやっていて、この大会にも出たことがあるとか?」
―バンッ!!
「…っ!」