妄想な彼女
雨の音、土で汚れた服…震えた体
―――そう。ここは戦で負けた村
ガサッ
舞台の真ん中ですごい形相で目の前にいる少女が男をにらんでいる
『お前は誰だ…っ』
地を這うような低い声
このワンシーンで体育館の空気が変わった
『なぁ、お前。俺達と一緒に戦わないか?』
『近藤、コイツはただのガキしかも女だぞ?』
『土方。気付かないのか?コイツには天才剣士になるほど才能がある。』
『…勝手にきめつけるなっ』
沖田は近藤をにらんだままだ
『まぁ、我々は佐幕派。お前の父と同じだ。つまり―我々と共に行動しておれば、父を殺した尊皇派にいきつくはずだ』
『……!!』
沖田は驚いたように顔を上げる
『本当か…?』
『あぁ、我々は尊皇派を規制する部隊…“新撰組”を作る。どうだ?』
『…っ、余計なことを言うな。父上の復讐なら自分でやる。』
その言葉に近藤はしゃがみ沖田と目線を合わせた
『復讐ではない。お前の父が果たせなかった事を娘であるお前が果たすのだ。尊皇派を倒すという思いを…』
『父が果たせなかった事…っ』
沖田は決意したように勢いよく立ち上がる
『……私は女だぞ。それでもいいのか?』
『今日からお前は女を捨てるのだ。お前は男だ。名前は………そうだな…“総司”だ。いいな?』
『…分かった。』
その時の目は、何かを恨んでいる目ではなく…侍としての目になっていた