妄想な彼女


一瞬最悪の展開が脳裏をよぎったが、沖田から小さい呼吸を感じホッとする





『沖田さッ…『…ッいんだ…』



女中の声に被さるように沖田は呟く

『え?』


聞こえづらかった沖田の言葉を女中が聞き返すと、今度は顔をあげしっかりとした口調で叫ぶように言う




『斬れないんだ…ッッッ!!斬れないんだよ!猫でさえも…私は斬れないッ…』


沖田は女中にしがみつき、声を殺して泣いた――




『沖田様…』



沖田総司が長年隠していた”女”を、隠すことなくさらけ出した瞬間だった――














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