黒の三日月
当たったのはヒイラギの右腕。
当たった瞬間に破れる筈もないのに彼の身に付けている衣装が裂けて、
そこからはうっすらではあったけど血が滲んでいた。
「誰!? 真剣なんて持ち出したの。そこまでリアリティ求めていないのに……」
舞台袖から聞こえる慌てた声。どうやらこれは本当にアクシデントらしい。
アクシデントでなければあんな声は出てこないと思うから。
でも観客席は絶対にそれを“凝った演技”としか見ていないと思う。
誰も悲鳴を上げるなんて事をしていないから。
このままお芝居は中止する事なく続行しなければならない。
当たった瞬間に破れる筈もないのに彼の身に付けている衣装が裂けて、
そこからはうっすらではあったけど血が滲んでいた。
「誰!? 真剣なんて持ち出したの。そこまでリアリティ求めていないのに……」
舞台袖から聞こえる慌てた声。どうやらこれは本当にアクシデントらしい。
アクシデントでなければあんな声は出てこないと思うから。
でも観客席は絶対にそれを“凝った演技”としか見ていないと思う。
誰も悲鳴を上げるなんて事をしていないから。
このままお芝居は中止する事なく続行しなければならない。