黒の三日月
また斬りかかるべきか戸惑っていると、


「どうした。怖気づいたのか」


と、ヒイラギが。これはアドリブだ。

傷つけられたと言うのに、痛がる事もせず何事もなかったかのような涼しい顔。

それが余計に腹ただしい。何で私がこんな所で怖気づかなければならないっていうの!?


「怖気づくものか、私がお前みたいな愚兄に負けてなる物か……!」

「岩代、夜見。そのままフェードアウトしろ」


もう少し剣でやり合う筈だった。

が、このアクシデントでは流石に続けるのは危険と判断したのだろう。

袖にいた倉山が慌てている桜井さんに代わって指示を出した。

そのまま剣でぶつかりあったまま私は前に進み、ヒイラギは後ろへと進む。

直後にまだ出番のあったヒイラギは手当てを受ける事もなく、再び舞台へと立った。
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