黒の三日月
「どういう事!?」


下手側にいた桜井さんが私の両肩を掴み、剣の事を聞いてくる。

私にだって分からない。ただ優衣に剣を渡されただけだから。

それを告げれば今度は桜井さんは上手側にいる優衣を遠くから見つめ、

やや睨んでいるように見えた。まさか桜井さん……優衣が犯人だとか思っていないよね? そんな冗談はやめて欲しい。


他にもアクシデントが起こるのではないかと始まった時以上のピリピリした空気が流れる中、舞台は幕を閉じた。

剣が本物になっていた、という点以外のアクシデントと言えば

私がうっかり猫耳をしないでまた舞台に立とうとしたくらいだろうか。

終わってもまだなお優衣に対する桜井さんの威圧感は残ったままだった。
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