黒の三日月
私はその言葉に返事もせず、ただ黙々と手当てを進めていった。

それでも珍しくヒイラギは黙らずに言葉を続けた。私が何か言うと黙る事が多いのにね。

「お前はあの時驚いていたが、それが本望じゃなかったのか?」


確かに私はこれが真剣だったら良いとは思った。

でもまさか本当に真剣になるなんて、誰が想像する? 驚かない方がおかしいんじゃないの?


「真剣になっていたのはアクシデントだよ。それを喜ぶなんて間違っているよ」

「だがやろうと思えばお前はあの時……」

「貴方を殺せて復讐達成? あんな沢山の人達の前で私がやるとでも?」


ヒイラギの言葉を遮るかのように、私は少し嫌みったらしく言ってみた。

するとヒイラギはふっと笑い、そして提案する。


「誰もいない所で、だったら出来たって事か? ではこうしようか」
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