黒の三日月
外を出ようと玄関で靴を履いている時に私は気付いた。

傘立ての所にあるのは私が置き傘として持っていた水色の傘だけであると言う事を。

ヒイラギの傘はなかったのだ。彼はずぶ濡れになる事もなくさっき私の目の前に現れた。

やっぱり人間じゃ絶対に使えない力とか使っているのかな……。


「入りなよ。狭いけど」


傘を差してから、私より少し遅れて靴を履いているヒイラギに傘を差し出した。

本当は入れるなんて事絶対にしたくなかった。でも。


「いい。濡れる心配をしているならそれはいらない。1人で行くから」

「瞬間移動か何かでも使う気でいるんでしょ?
お願いだからもう私の目の前で貴方しか使えない力は使わないで」
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